糟谷の歯科講座第一回
(平成19年4月1日)
「おまえ、ばかじゃないのー」
いきなり言われたら皆さん、腹たちませんか?
忘れもしません。このセリフ、
私が最も尊敬する教授、
K教授の最初の授業でのセリフです。
「人間とは何か?」
の問いに対して、同級生の答えを
聞いた教授が言い放ったこの言葉、
強烈です。
同級生は、
「人間とは考える葦である(byパスカル)」
「重い荷物を背負って長い道を~(by家康)」
等々答えていったが、
「へえーお前植物なのー、ホントにそう思ってるのー」
「何の荷物?」
等々有無を言わせないK教授の言葉に、
室内は緊張状態で、いっぱいになり、
ぴりぴり(想像してみて下さい。)と
今にも音を立てていくようでした。
私にも質問がきました。
私は今でも聞かれたらこう答えます。
「重要な問題なので、今は発言を控えさせて下さい。」
K教授は、「人間とは何か?」
と問いかける事で種々なことを
考える時間を我々にくれたんだと思います。
言っている本人が一番ツライ授業を
敢えて実践して下さったと私は考えています。
本当に素晴らしい先生でした。
(K教授の話は、だんだんとお話させていただきます。)
さて下図をご覧下さい。
太い部分は、パッと見て、どちらが長く見えますか?
見た事のある方は、お分かりだと思います。
実はこれ同じ長さなんです。
私が言うのは生意気なのですが、世の中には、
1+1が2ではない場合や、こうだと思っていても、
それが違っている場合、又、見る視点によって
全く異なる結果になったり、結果がでなかったり
することもあります。
上図がシンプルな例です。
歯科の分野で言えば、
うみが絶えず出ている歯があったとします。
①永久歯は抜いたらもう生えてこないから、抜かないほうがいい。
という視点を重視すれば、抜かないでうみが出ないようにする治療
をしていきますし、
②うみの出ている歯を抜かないでおくと、菌が心臓の弁に付着して
全身状態に少しずつ悪影響を及ぼしていくから、残念だけど抜歯する。
という相反する考えがあります。
下図レントゲンをご覧下さい。(私が治療させていただいた歯ではありません。)
皆さんはこのような状態をどう判断しますか?
私は上記2点についてAさんにご説明させていただき
Aさん御本人に選択していただきました。
奥様が歯科衛生士のAさんは、
奥様とも相談の結果、
抜かない事を決断されました。
一方、ある同業歯科医師は
「自分自身がそうだったらのなら抜く」
といいました。
もう少し深く考えると、
自分自身がその状態になっているのは
Aさんなのです。
自分自身がそうならないと
本当には判断できません。
特に、良し悪しではなくアメリカでは、個人の意志が尊重されますので、
「延命処置は、しないで下さい。」
と署名してあれば、延命処置はしません。
(したら、訴訟の対象になるのです。)
私は私個人の考えと違う決断された患者さんにも
考えを強要しないようにしています。
これも考え方の一つです。
(非常に残念に感じることもありますが・・・)
皆さんは
「人間とは何か?」
と問われたら
何とお答えになりますか?